YASさん ~The World~

デザインから日常から~

隔離病棟


少し手を伸ばせばすぐにでも壁に触れられる程の狭く閉ざされた密室…自然と溜め息が漏れる。額に滲む脂汗を拭い、頭を抱えてうなだれる。

「自分は一体なにと戦っているのか…」
「何故こんなにも苦しまなければならない…」

一体どれほどの時間が経ったのだろうか。その狭い空間の中では時間の感覚すら分からなくなる。数分?いや数十分?煙草の煙をくゆらせる程度の僅かな時間さえも、まるで永久(とわ)の時間のようにも思える。

目の前にある、何も描かれていない白紙を眺めながら、抗う事の出来ぬ苦痛を前に苦悶の表情を浮かべ、眉間の皺は更に深く刻まれていく。こんな時、人は何を思い、何を祈るのだろうか…刹那に過るその考えを、耳障りな水の音がかき消していく。






額から顎へ滴る汗が、一滴の雫となり、うなだれる男の足元へと流れ落ちた。

それを何かの合図のように、男は立ち上がり、鈍く光る銀色の引き金を引いた。

「……終わった……」

魂の脱け殻のような重たい身体を引き摺りながら、光の差さない閉ざされた空間から、自分の足で歩み出た。

















要するに…

「メチャクチャ腹痛かった」

という事である。